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「意識の流れは」

「意識の流れは」

意識の流れは
水の流れていく様とは異なり
方向はあるようで
ないようで

留まり
走り
ジャンプし

そして飛行する時間の枠は消え
縮んで
伸びて
伸びて
パチンと途切れる

眠っている時も
起きている時も
ぴたりと寄り添うもの

たまには
それぞれ
独立してみたくもあるが
意識なしに思考は生じず
語りもできない
厄介な双つ子同志

この世界に登場した
その始めより
共にいる者

故に
互いに互いをあざむくなかれ
互いに互いを許すなかれ
へらへらと同調するなかれ

意識の流れの源の
静かな水面に
ポタリと落ちた一葉の
波紋
それが私だ

木の下の闇に

木の下の闇に

木の下の闇に

木の下の闇に もぐり込めば
世界は 遠くに去っていく

いない いない いない
坊やは そっと つぶやいた
聞いているのは かくれんぼの木ばかり

木の下の闇に もぐり込めば
世界は 遠くに 去っていく
あとに残るは 坊やだけ
ぜんぶ坊やの 世界だけ

みつけたよ みつけたよ
笑い声が聞こえる

坊やの世界
木の下の闇の
かくれんぼの木のまわり

無題

無題

落ちるものが  そっと落ちるようにと
やさしく 受けとめる手がある
それは何と安心なことだろう

落ちるものが そっと落ちるようにと
やさしく受けとめる手があって
森はこのように幾層ものやわらかい
褥をこしらえる

或る日、ついに老木が
大地を揺るがして
その身を横たえる時も
やさしく受けとめる手は
幾百年にも積み重なった厚い褥を用意して
老木を涅槃へと導いていく

落ちるものが そっと落ちるためには
その身が 小さければ さらによい
何も持たずに 身ひとつで

空中に飛び出す木の葉のように
くるり ひらりと 回転して
あの大きな手の中に入っていこう

記憶の底の
大きな手の中に