お人形をのせて
わたしは おかあさん
わたしのおひざに
生まれたばかりのおとうとを
のせて
わたしは おねえちゃん
わたしのおひざは
それからしばらく空っぽで
そのうち
誰かさんの枕になって
やがてわたしのおひざに
赤ちゃんひとり
わたしは おかあさん
それからそれから
赤ちゃんが
次から次へやってきて
わたしのおひざは
ずっと満員です
それでもいつか
誰もいなくなって
わたしのおひざは空っぽ
誰かさんが摘んできてくれた
野の花一輪
おひざに置いたけれど・・・
ある日
わたしのおひざに
赤ちゃんひとり
わたしは おばあちゃん
わたしのおひざに
ミルクのしみ
たべかけのビスケット
小さなお人形
坊やがこしらえてくれた
木の小鳥
川で拾ったつるつるの小石
わたしのおひざに
今はもうないけれど
わたしのおひざは
覚えている
ずっとずっと昔
わたしはおひざに
お人形をのせていた
私はおかあさんの
おひざにのっていた
わたしのおひざは
覚えている
おかあさんの
おひざを
覚えている
2013.5.27