見ることは 心に傷をつけること
それはうっすらとツメをたてることであったり
ていねいにナイフで線を刻み付けることであったり
瞬時に熱い光で焼き付けることであったりする
だから
空を飛ぶ鳥も
風に揺れる樹々も
赤子の泣く声も
優しい人の姿も
我が身の中に 全て収まっていくのだ
こんな小さな我が身の中に
しなびたりんごの肌を見ることで
崩れゆく老木のかたわらで
ひっそりと育ちゆく若木を見ることで
世界の広さと 深さと
長大な時間までもが
我が身の中に収まっていくのだ
こんな小さな我が身の中に
やがて
刻まれた印で
我が身がおおわれた時
私も又 宇宙の似姿となり
傷の記憶を携えて
空へと還っていくのだろう