私は誰かを捜していたのです。
森の中を
茨やつるは行く手をさえぎり
一歩進むたびに深く沈みそうで
私は両の手を拡げ
森の中を泳いでいきました
気がつくと
私は木の上を歩いているのです
見上げる空は青く
底知れない海に似て
足元に拡がる緑の枝は
空との境にあるために
風がしきりに緑の波をたて
小刻みにふるえていました
私は誰かを捜していたのです
いったいどこにいるのでしょう
私の口から ひいよと声が生まれました
小さな鳥のようなその声は
魂そのものでした
ことばの最果ての木の上の
青く拡がる空の中へ
飛びたっていく
その時までに
私は幾度もここへ
やってくることでしょう
最後のことばが
小鳥のさえずりとなって
輝いています
捧げ物のように
空に向かって