ドコノモリは浮き山さんの裾野に拡がっています。
だから、まず、このお山のことをお話ししましょう。
浮き山さんの頂上には、いつも雲がかかっている。
浮き山さんのぼんぼんは小さい。
時々、お散歩している。眠りながらお散歩する。
時々、目を覚ますと、小さな虹が、ぼんぼんの頭の上に輝く。
お母さんの浮き山さんは、いつも寝ている。
夜も昼も。
長い長い眠り。
浮き山さんの頂上に、ある日二重の虹がかかる。
とてもきれいな大きな虹。
森の仲間は、皆、その美しい虹を眺めるのが大好き。
今日も皆は浮き山さんの頂上を眺める。
虹がでているかなと。
森の朝。
仲間たちがごはんをたべていると、どこかで誰かがくしゃみをしたような音がしました。
何だろう?と皆がごはんを食べるのをやめた時、ぐらりと地面が揺れました!!
「浮き山さんだ!!」皆は大急ぎで浮き山さんが見える原っぱへ走りました。
その間にも、地面ががたりごとりと揺れました。
原っぱに咲いていたスズランが、あちらでもこちらでも花がぶつかって、ガラスのような音をたてていました。
浮き山さんは何回もくしゃみをしました。
くしゃみをするたびに、頂上の方で赤や黄色や金色の火花が輝きました。
「出発なんだね!!」誰かが言いました。
ドコノモリに伝わる古いお話しには、浮き山さんが動いて別の場所に行ったというのがあります。
もちろん、ドコノモリごと全部を引き連れて、よっこらしょと動くのですよ。
ずっと前には雪と氷が一年中ある海に行ってしまったということです。
浮き山さんはそこで島になりました。
ドコノモリに住むご先祖さまたちは、風邪をひいたりして大変な思いをしたそうです。
さあ、出発となったら大変です。
ぐらぐらがたがた、樹や草が揺れ、木の実、草の実がぽとぽと落ちてきます。
せっせと拾い集めてはお口に入れました。
何だか皆、忙しそうにしていますが、別に出発するからといって準備するものはありません。
うろうろ、あちらこちらに動き回って、会う人ごとに「出発だね!!」と言うのです。
そう、皆、わくわくしているのです。
浮き山さんは今度はどこへ行くのでしょう?
たいてい、浮き山さんは、人や船や飛行機があまり通らない場所を選んでいます。
そして、こぢんまりとしたお山のそばに、まるで影のようにすわります。
そういう所は、やはり森もありますから目立たなくていいのです。
ずっと昔から、そこにいたかのように浮き山さんはすわってしまうのです。
そして、引っ越してきたお山と森とは知らずに子どもが入ってくるでしょう?
森の中で、楽しく遊んでいる声を聞くと、浮き山さんは眠っていても何だか嬉しくて、おかしくて、「わはは・・・」と笑ってしまうのです。
山奥で、急に頭の上の方から笑い声がしたら、それはドコノモリに迷い込んでしまったのかも知れませんよ。
さて、浮き山さんはどこに行き着くのでしょうか・・・。
(次回へとつづく)
「ドコノモリの仲間たち」第二回
2013.03.30